内緒の気持ち

「佐藤、ごめんな」

先生の声が微かに
後ろから聞こえる



だめだもう、堪えきれない



「うっ、ひっく、うっ」

その場にしゃがみ込む私。


「せんせっ、せんせぃいっ」



「佐藤。」

見上げると私を心配そうに
覗き込む先生。


「せんせっ、あたし
あたしっ」


「おいで、」


先生に呼ばれ
後ろをついてく


静かな廊下には
わたしの鼻をすするおと

先生とわたしの上靴のおと

これだけしか
響かない。


「ほら、入れ」

「失礼します。」


「、、、、」

部屋には沈黙が流れる。


「何で泣いてるのか聞かないんですか?」

わたしは沈黙の末に先生を
見上げて話しかけた時、


先生は悔しそうな
なんとも悲しい顔をしていた。


「せんせ?どぅしたの?」

「どこか痛いの?」


そう尋ねるあたし。


「お前が泣いてる理由なんて
わかるよ。
おれ、今どんな顔してる?」


「すごく、悲しそうなような
悔しそうなような」

「お前もおんなじ顔してるよ」


ドキッ


それって、私たちの気持ちは
同じってこと??

好きだけど先生だから
好きだけど生徒だから


こうして、私たちの気持ちは

封じ込められているの?



二人とも同じなの?



「先生、それって」


「ダメだ。」


「えっ?」

「何にもいうな。」


そう言って先生は
笑って、わたしの頭をポンって

いつものように

よしよししてくれた、





「先生、特別な生徒居ますか?」


「俺は教師だ。皆生徒は同じだ」

真っ直ぐな瞳で私を捉えながら
話す先生。


「私、先生の力になりたい。
先生が困ったら助けてあげたい。

わたし、先生の特別な生徒に
なりたい。」

思い切って言った。


「ありがとう。
俺は分け隔てなく皆に接するよ

でも、お前の気持ち嬉しいし、

もう。お前は特別な生徒に
なってるのかもな。」


先生は
優しく話す。



「先生、私の事
覚えてますか?」


「ん?」


きっと覚えているはずない。




「帰ります。そろそろ」