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放課後、いつもどおりお迎えが来たと思ったら、仙崎はどこか神妙な顔をしていた。
不思議に思いながら、あたしは彼の前に立つ。
そんな彼があたしを見て言った言葉。


「和葉さん、今日先帰ってくれますか?」


「…」


あたしは黙って彼をじーっと見てしまった。
だってそれは、かなり無謀すぎるお願い。


「あの…?」


「一人で帰れるの?」


「っ、…や、やればきっと」


「できなかったのは誰よ」


「……はい…」


あたしの攻めの言葉に下を向いてしまった彼に、あたしはため息を吐いた。


「用事あるんでしょ?
待っててあげるから行ってきなよ。」


「え、でも」


「校内のどこかにいるから、用事終わったら電話して。番号知ってるよね?
…遠慮なんて君らしくないことしないでよ。」


そう言って、あたしは手をグーにして、彼の胸板をトンと押した。
が、なかなか返事をしない彼に、少しいらついて、


「わかった?」


と少し強めに言うと、「はい」とだけ返ってきたので、あたしは笑って「じゃ、後でね」と返した。


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