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「和葉さん、帰ろ」


「却下。」


放課後、三年生の階であたしに声をかけてきた彼に、あたしはそれだけ言った。
初めは、一年の彼がこの階にいるのに違和感を感じていたが、もうすっかり慣れてしまった。


「え、なんでですか?
あ、この前のパフェに反対したの、未だに根に持ってるとか?!」


「そんなの気にする程子供じゃないよ。」


あたしは慌てる彼に、ため息をつきながら呆れた。


「今日は由梨ん家行くからだめ。
頑張って一人で帰って。」


「無理、無理ですって」


「何弱音吐いてるの。
今や幼稚園児がお使いに行ける世の中なのに、男子高校生が情けない声出さないでよ。」


「だって本当に無理…」


頭を垂れてあたしに訴える彼は、首を横に振り呟く。
が、構ってられない。


「まぁ、帰りに君がまた倒れてたら拾ってあげるから。
お土産持って帰るから楽しみにしてて。じゃ。」


「うえ、ちょっと和葉さ…」


彼に引き止められる前に、あたしは由梨の腕を掴んで全力疾走した。


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