『じゃあ、以上でホームルームを終わる。早くかえれよー。』

早くかえろ。


―ガシッ―

『ひゃっ…』

『ねー、ちょっと四人で話さない?』


この人って…、音島渚くん?

私と何を話したいんだろう。


『ねぇ、よにんで仲良くしよっ!俺は音島渚。渚って呼んで★』

『…私は、都倉奈生。よろしくね。奈生でいいから。』

『わ、私は逢坂萌那です。萌那でいいです。』


もう一人の人はしゃべろうとしないんだなぁ。
てゆうか、睫毛長いなぁ。

『ちょっと、海音、じこしょうかいしてよ。』

『……めんどくせぇな。夏目海音。』


海音くんかぁ。
でも、私…恋しない方がいいんだよね。


『ねぇ、俺らの名前ってさ、しりとりみたいだよね★』

逢坂萌那、夏目海音、都倉奈生、音島渚。

たしかに。


『あ、私今日用事あるから帰るね。じゃあね、二人とも。あと、萌那★』

『バイバイ、奈生ちゃん。』

『じゃあ、俺らもかいさんでいんじゃね?』

『ま、そうしますか。萌那ちゃん。一人で大丈夫?』

『うん。うち近いから★』


二人とバイバイするのってなんだか寂しいな。
でも、帰るか。


『ただいま、パパ。』


かえったらまずパパの仏壇に手を合わせる。
パパは二年前に交通事故で亡くなった。

『あら、帰ったの、萌那。』

『ママ、今日は早かったんだね。じゃあ着替えたらバイトいくね。』


うちの学校は基本バイトはダメなんだけど、私は母子家庭だから、許可されてる。


『じゃあ、いってくるね。』

カーディガンだけで外に出たから少し寒いかも。
だけど、風は心地いい。

バイト先は本屋。
本が昔から好きだから。


『こんにちはー。』

カウンターに立って店番をするだけ。


『…あ、お前たしか…モコ?』

『あ、海音くん。萌那ですっ!!』


モコって…。


『ま、俺他とちがう呼び方で呼ぶの好きだし、モコでいいや。』

『ふっ。モコって。笑っ』

『なにわらってんだよー。笑っ』

―ぷにっ―

『いひゃいー。笑っ』


海音くんて意外に楽しい人なのかも。


『じゃな、モコ。』

『ばいばい、海くん!』


私も特別な呼び方がいい!
そんな気持ちで呼んだのに。

真っ赤になるなんて。笑っ

ふふっと笑ってしまった。