『ありがとう。哲のお陰で皆に話せた』

「…朔月の力だよ。俺はなんもしてない」



なんもしてない訳ないだろ、ったく


お前がそんなに優しいから、オレはお前から卒業できないんだ



「…時間ないから、改札向かっていいか?」

『…ん』



時計を確認しながら言われた言葉に頷く



止めては駄目なのに、行かせたくない

行かないで、と腕を掴みたくなる





自分で応援しといて、なにやってんだよ、オレ…






言いたい事も沢山あるのに、止めてしまいそうになるから口を開けない



なあ、哲

喋ってくれよ


もっと元気にいってくる、って言えよ…


じゃないとオレ、お前を止めてしまいそうだ





「……、朔月と離れるのは寂しいけど、俺、パリ楽しみなんだ」


改札につくと哲は顔を上げ、おもむろに口を開いた




『…うん』

「頑張ってくるから、俺」

『う、んっ…!』

「…っ!さ、さよならは言わないから!」



涙を貯めた強い瞳

そんな綺麗な瞳を脳裏に焼き付ける



『オレも、頑張る。応援してるな?哲!』

「おう!」




そうか、言葉なんかなくても、想いは通じていたか