『あー、時間だな。あ、呼びに来たのか?』
時計をチラリと見た朔月
その目がまた俺を見ると俺の心臓はドキンと跳ねる
「そ、そうだ。呼びにきたん……」
『いーのか?ここ、廊下だぞ?』
あっ!!
しまった…動揺しすぎだ、俺
朔月の部屋以外にプライベートがないこの屋敷で、気を抜いたら命取り
命、じゃなくて首がかかってんだけどな
だったら、部屋でもちゃんとしてればボロが出ねえんだろうけど……欲が出ちゃったんだよ
朔月と、雇用主と雇い主の関係で終わらしたくないって……
執事失格だよな、実際
執事の心得じゃ、かなーり重要注意だ
[ご主人様に特別な感情を抱くべからず。異性ならなお]
……………はぁ
俺はこれを初日で破った
こんなに惚れっぽい野郎だとは思わなかった
いや、実際そうだ
俺はこの年になるまで、本気の恋愛なんてしたことなかったから
遊びで女と付き合ったりしても真剣に好きになったことはない
『…おーい?失敗は誰にでもあるだろ?ホラ、戻るぞ』
「……う、は…はい」
『ブッ!続けるとうははいだな(笑)』
続けるなよ…
ケラケラ笑った朔月は自分の部屋へと足を進める
少し遅れて歩き出した俺をなんとなく待っててくれて、そんな優しさがまた、俺の胸を焦がすんだ