その言葉にオレも光樹に目を向けた

機嫌が直ったらしいお子様はオレと目が合いニヤリと口角を上げた



「“運命の人”だ」



「『は?』」


オレと泪の声が重なる

目を見開いて驚いているのはオレだけじゃないようだ



「えっ、運命…って……光樹がそんなの気にしたのぉっ?!」

「気にしてねぇよ。只、答えるなら一人しかいない」



う、運命の人…

ドキリとオレの胸が跳ねた



それは恋とかそういう物ではなく、昔の出来事が頭を霞めたからだ



《お前と俺が出会ったのは運命だよ。だから俺から離れる事はできないからね》


………



記憶の中、一人の男が呟いた

それは、良い記憶でもなく
また
暗い記憶でもない



今は存在しない、記憶


存在しないが確かに存在する矛盾の中にあるソレにオレは反応した




冷や汗が頬を伝う



「さ、さっくん?どーしたの?」


泪の声にハッと我に返る

オレらしくない


過去の記憶に心を動かすなんてオレじゃない

最近甘えすぎたのか?


ギュッと拳に力を込めながら泪に笑いかけた


『大丈夫だよ。光樹が運命とかキモいんだけど』

「あー?うっせぇ」







皆で笑い合う中、オレは混沌の中で生まれた矛盾の記憶の存在に気づかされた事を考える

気づいた所で何も出来ない

オレは進むしかないのだから……