「ごめんなさい。今日は、先約あって…」 「そっかぁ…なら、また今度。お客さん待ってるから、仕事戻って。仕事中にごめんな」 俺は、絵里の頭をポンと軽く叩いて、絵里の目も見ずに、立ち去ろうと歩きだした。 「た、健!」 絵里に呼び止められ、振り返える。 「おかえりなさい」 笑ってそう言ってくれたが、その表情は戸惑いのままだった。