いつも俺がギターを弾いていたベンチに、
真琴がいた。
そして、俺と祐樹もいる。
数年前の俺たちだ。
過去の俺たちの姿が目に飛びこんできた。
「しかたねぇだろ。河瀬も相川も就職しちまったし、これ以上続けていけねぇんだよ」
どうやら、バンド解散で揉めた時だった。
「2人でやればいいじゃない?健と祐樹くんで!」
「あのなー。そう簡単にいかねぇんだよ」
真琴は必死でバンド解散を止めたっけ?
「あのさ、真琴…俺も親父とお袋が就職しろってうるさいんだよ」
「祐樹くんも音楽辞めちゃうの?」
「辞めたかねぇけど、しょうがねぇよ…」
「ったく、どいつもこいつも!男ならもっと度胸見せなさいよ!バカ!」
「おい、真琴!バカはねぇだろ!バカは!」
「もう知らない!解散でもなんでもしちゃえー!バカー!!」
俺はそんな幻想を見てフッと笑ってしまった。