「おはよう。あれ?健は?」
リビングの扉を開けると、健の姿がそこには無く、お母さんが朝食の支度をしているだけだった。
「まだ寝てるみたいよ」
「そっか…」
私は、朝食を済ませ部屋に戻りいつも通りの仕事スタイルに着替えた。
メイクを済ませ、髪を整え時計を見るともうすぐ8時になろうとしていた。
10時発の飛行機だからそろそろ出ないといけない。
荷物を持って、リビングに再び顔を出すが、健の姿はまだ無かった。
「健、まだ起きてないの?」
「まだ寝てるみたい。真琴もう行くの?」
「うん。そろそろ行かないと間に合わないかな?」
「そう、気をつけてね」
「うん」
「頑張って!あ、お土産も忘れないでよ」
「分かってるって!行ってきます」
「いってらっしゃい!」
お母さんはガッツポーズをしてにっこりと笑った。
玄関に向かう途中、客間のドアをノックし、ドアを開けた。
健はベッドでうつ伏せで大の字に寝ている。
あたしは少しモヤモヤした。
今から出発するのに、なんで寝てるわけ?
起きて見送りくらいしてよ…
健のバカ…。
寂しくないの?
一週間逢えないのに…
寂しいのはあたしだけなのかな?
「健…行ってくるよ」
とりあえず起きるか分からないけど、声をかけてみた。
さすがにこのまま黙って行くのは嫌だった。
「もし、なんかあったら連絡してね。健、あたしすぐ帰ってくるからさ」
健は無反応だった。
私はため息を吐いて、ドアを閉めようとした瞬間、
「うぃー」
健はうつ伏せで寝たまま左腕を上げた。
それから健は起き上がることもなく、私の顔すら見なかった。
私はドアを閉めて、深いため息を吐いた。

