それからしばらくして、
もう二曲ほど奏でた。
真琴は優しい笑顔で聴き入ってくれていた。
時に、鼻をすする音が聞こえてきたので、泣いているのは分かったけど、
真琴は弾き終わると、笑顔で拍手をくれた。
「綺麗だね…夕日」
真琴は立ち上がり、そう言いながらフェンスに寄りかかった。
「健のギターと歌と夕日と…なんか贅沢だな…」
そう呟く真琴の後ろ姿を見つめると、すごく愛おしくなった。
ベンチにギターを置き、俺も立ち上がった。
周りの目を少し気にして、ちらっと見たが、屋上にまだ残っていたのは、俺たちだけだった。
俺は、すーっと息を吐いて、
真琴を後ろからぎゅっと抱きしめた。
真琴は、少しびっくりしていたけど、
俺の抱きしめている両腕に自分の手を添えた。