「このギターどうしたんっすか?」
健が目をパチパチさせて驚いて質問すると、伊豆先生は少し恥ずかしそうに答えた。
「僕のギターだよ。僕個人の医局室にいつでも弾けるよう置いているんだ」
「先生もギターやられるんですか?」
「まぁ、趣味でちょっとだけ…でもこの歳でギターとか恥ずかしいから、他の先生や患者さんには秘密にしてるんだ」
「初耳です。びっくりしました…」
「仕事の合間とか…大きな手術前や術後に鳴らすと、気持ちが落ち着くんだ…。まぁ、秘密にしてるけど音が漏れてみんなにはもうバレてると思うけど」
「先生の鳴らすギターも聴いてみたいです」
「音楽ほど人に安らぎや勇気を与える物ってそうそうないからね…。健くん…僕の方こそ君のギターの音が聴いてみたいよ。ごめん。さっき君達の話を少しだけ聞かせてもらってて…。このギターで弾いてみてくれないか?」
先生は、健に自分のギターを差し出した。