「真琴ちゃん、思いっきりぶんなぐってやれ!黙ってたあいつが悪いんだ」


「茂さん…」


「真琴ちゃんを悲しませたくないと思うあいつの気持ちも分かるが、あいつは向き合うこともせず、単に逃げていただけなんだ。黙ってることでどれだけの人間が悲しむことになるかなんて考えてもいない大バカ者だよ」

茂さんの目も潤んでいるのがわかった。


「隠すことは優しさじゃない。相手を本当に想うのなら、きちんと話をするべきだったんだ。それを、何も言わず居なくなって、いきなりぶっ倒れて、これだけ心配かけて…本当に大バカ者だ…」


茂さんが、じっと私を見つめた。


「自分を責めちゃだめだ。真琴ちゃんは何も悪くない。自分以上に他人のことを理解するのは、親や兄弟でも難しいことなんだ」

茂さんは息を吐いた。


そして、ゆっくりと呟いた。



「あいつに会って、ぶん殴ってこい!」




茂さんの言葉で、心の中にあった針が抜けた気がした。