その瞬間、涙が頬を伝っていた。




健が歩く足音だけが、心に響いていた。




一歩、また一歩と


私から離れていく。




涙を流しながら、目を閉じた。




物心ついた頃から記憶の中にある健の姿が走馬灯のように駆け巡る。




そして、




「健!待ってよ!!」




私は、叫びながら振り返った。