「健には、幸せになって欲しい。心から好きな人と…。あたしじゃないのが悔しいけど…」
そう言った絵里の目から、涙が一粒こぼれ落ちた。
その涙を見たら、抱きしめたくなる。
でも、俺にそんな資格はない。
絵里は、俺の気持ちに気付いてて、3年も付き合ってくれていたのか…。
でも、俺は絵里への想いも本気だったんだ。
決して、遊びなんかじゃなかった!
その気持ちにウソや偽りはない。
ただ、真琴を忘れられなかっただけだ。
真琴への想いを消す為に最初は付き合っていたけど、絵里の隣にいると安らぎがあった。
包み込む優しさが俺を癒してくれていた。
「最後にひとつ聞いていい?」
絵里は、涙を拭うとフッと笑って俺を見た。
「あたしのこと、好きだった?好きでいてくれたことあった?」
俺は、絵里の目をまっすぐ見つめた。
「好きだったよ。俺は、絵里が好きだった。でも、真琴のことは…」
俺は絵里から視線をあいつが好きな月を見上げて、
「愛してるんだ…」
そう呟いた俺に、絵里はにっこりと笑ってうなづいた。

