絵里が今のマンションに引越した時、俺に合鍵をくれた。


俺は結局、二回しか行くことはなかった。



「別れよう…絵里」



俺の言葉に、絵里は小さくうなづいた。



「本当は…二週間前…健が家に来た時に、あたしも話そうと決めてたの…」



絵里の視線が俺から東京タワーに移った。


「けど、美味しそうにあたしが作った料理食べてくれて、箱根に旅行した時の話しをしてたら、言えなくなっちゃった」


「絵里…ごめんな、俺は…」


「本当は…出会った時から、知ってたの…健の本当の気持ち…。健が真琴ちゃんをずっと想ってる気持ち…。でも健が誰を好きでもよかったの…隣に…あたしの隣に居てくれたらそれだけでよかったし、嬉しかったの」




絵里の言葉が胸を締め付ける…。




絵里は知ってたんだ…


俺の気持ちをずっと…。



「でも、それは間違いだった。偽りなんて、誰も幸せにはなれないんだよね?あたしも健も…」