真琴の歌声が聴こえてくる。
俺の演奏に、今度は真琴が華を添えてくれる。
俺は嬉しかった。
やばい…。
目頭が熱くなってくる。
涙が出そうになっていた。
だがその時、
俺より先に涙を流したのは…
真琴だった…。
「真琴泣いてんの?」
桐谷の声に、俺の指が止まった。
真琴の目からは、涙が溢れていた。
手で顔を覆う真琴。
みんなの視線が俺から真琴に移る。
「ご、ごめん…やだ、あたしなんで…?」
真琴が涙を拭いながら、立ち上がった。
「目にゴミ入っちゃった。目洗ってくる…」
真琴はそう言いながらも、水道ではなく、コテージの方へ走り去った。
そして、その姿を追うかのように、晴人も立ち上がって行ってしまった。
走り去る2人の背中を見つめた。
俺は、息を呑んだ。
俺の身体は動かない。
残されたみんなも一瞬何が起こったのか分からないまま沈黙が流れた。
真琴は泣いた。
あの日みたいに、俺の演奏で真琴は泣いたのか?

