「健が持っていかないなら、あたしが持ってく」 私はそう言ってギターを背負った。 だって、あの日以来、ギターに一切触れていないみたいだから、こういう時くらいは聴きたい。 お願いだから私のわがまま、聞いてよ…。 ギターを背負い、行こうとしたら、健に強く引っ張られた。 「持っていけばいいだろう…でも、弾くかは、分かんねーぞ」 健は、渋々ギターを私から奪って背負い、玄関へと向かった。 そんな後ろ姿に、少しだけ顔がにやけた。 健のギターが聴けると思うと、お花見も少し楽しみになってきた。