「おはよう」
リビングの扉を開けると、お母さんがいつものように朝食を作っている。
健は、まだ起きていないようだ。
「今日、みんなでお花見行くんでしょ?」
「うん。なんかでも憂鬱…」
「あら?どうして?お花見なんて楽しいじゃない?」
「うん。ちょっと…」
お母さんは、私のテンションの低さに首を傾げた。
「じゃあ、行って来ます」
出発の準備をし、リビングに顔を出すと、
「あら?健くんは?」
朝食を済ませた後、部屋で準備をしていたから、朝から健の姿を見ていなかった。
健、出発の準備終わったのかな?
「健、行くよー。準備出来たー?」
そう言って客室のドアを開くと、健は何かを隠す素振りをみせた。
「ノックぐらいしろよ」
「はぁー?自分だってしないじゃん。準備出来たの?」
でも、私はあまり気にもしなかった。
帰国以来、健の隠し事なんていちいち気にしてられなくなっていた。
「あ、ああ。もうそんな時間?」
「9時に駅でしょ?もうそろそろ出なきゃ」
「そっか。行こうぜ」
なんとなく楽しそうな健に、なんとも言えない気持ちになった。
駅にみんなで待ち合わせ。駅からは、晴人くんの運転で花見をしながらバーベキューが出来るスポットに行くことになった。
晴人くんは、家まで迎えに来てくれるって言ってくれたけど、断った。
健と一緒に住んでいるのを知られたくないし、みんなも一緒だから対等で居たかった。

