70kmでも全然駄目で、空振りばっかり。
健によくバカにされてた。
健の顔がふと頭をよぎり、バットを持つ手に力が入る。
結局また空振り。
そんな私を見て晴人くんが、笑ってる。
映画館前で慌てていた晴人くんの姿は消えていて、なんだかホッとした。
「よし、俺も久々やるか!」
「久々?」
「俺、中学の時は、野球部だったんだ。万年補欠だったけど」
そんなことを言った晴人くんだったけど、軽々と打っていた。
晴人くん、楽しそうに笑ってる。
本当よかった…。
デートでバッティングセンターなんて、全然ロマンチックも色気もないけど、
来てよかった。
と、心から安心した。

