「…は?」 急に頭を下げられて、困惑する。 「俺はずっと、お前から逃げていた」 「……」 「母様とは、政略結婚だった。 俺は、何より後継ぎが生まれる事を望んでいて…」 「でも生まれたのは私。娘だった。 娘じゃ、後継ぎにはなれない」 「…ああ。母様を責めて、お前を疎んで、俺はこの家から逃げた」 「……」 「母様が死んだ日も…俺は仕事で、お前に何もしてやれなくて、 …いや、仕事を言い訳にしたいわけじゃない。 あの時は、何もする気が無かった」