「ちょっ、待てよ沙凪…!」 追い掛けて来る颯を無視して、 玄関先に停めてあるリムジンに乗る。 あわてて飛び乗ってきた颯を受け入れてから閉まるドア。 「沙凪…」 「……」 「…俺、居るから。大丈夫。だから泣くなよ」 「泣いてない」 「でもこれから泣くだろ?」 その言葉に誘われるように、涙が溢れた。 いつもは向かい合って座るのに、今日は隣に座る颯。 あの頃よりも大きくなった体が、あたしを包んでいて。 控え目に颯の腕にしがみ付いて、声を押し殺した。