「それを作ったのは
私じゃないんだ。
こういう料理は苦手でね。
ただ、和希ぐらいの年頃には
煮物とか焼き魚はどうかとね。
悪いけど明日からは
地味な食事になるよ。」
絹江さんは気まずそうに笑った。
「へえ。気遣い有り難うございます。
でも、俺は煮物も焼き魚も大好きですよ。」
嘘じゃない。
母さんは料理をしない人だったから
俺は自分で自炊していた。
だから、誰かが作ってくれたってだけで
俺にとって特別なものだ。
「そうかい。それなら安心だね。」
絹江さんは俺が思ったよりも
無口ってわけではないらしい。

