もうその頃には完全に剣の道にのめり込んでいて。
決して勉学が嫌いだとかつまらないと思ったことはなかったが、向いていないとは思っていた。
上手い方便を口にするより、刃と刃を交じ合わせたほうがいい。
そっちのほうが自分には似合ってると思ったし、それこそが生き甲斐だと感じていたんだ。
それは生涯変わることはないだろう。
そして十九の春。
強い奴と刀を交えたいという己の欲求に負けた俺は、ついに両親に何を告げることもなく藩邸を飛び出したのだった。
唯一の救いは、当時の松前藩がそのご時世には珍しく武術奨励としていたことだろうか。