鉄之助はふと、それが"副長"には一番必要な技量かもな、と昔誰かが笑っていたのを思い出した。




「だからよ、これは脱走じゃなくて任務なんだ。滅多にねぇ"歳三"からの使いの頼みだぜ?……出来るよな、鉄」




そうまで言われてしまっては、もう鉄之助には頷くことしか出来ない。


名前を呼んだ土方の顔があまりに優しくて。

それが本当に"歳三"からの願いなのだと理解せざるをえなかったから。


鉄之助にとって土方歳三という男は絶対。何よりの存在で。


隊士募集の知らせを聞き、美濃の地より馳せ参じてから今日まで鉄之助はこの背中を見て歩んできた。


武士たるを、男たるを土方に学んできたのだ。