指先で紡ぐ月影歌





今までの時間がすべて幻になってしまうんじゃないかと不安になる。

泡沫の夢のように消えてなくなってしまうんじゃないかと、柄にもなく泣きたくなるんだ。


俺はこんなにも弱かっただろうか。


それでもこの形のない恐怖は消えてくれなくて。




「知らない世界に、俺一人残されるのが、怖い」




近藤さんも総司もいない。

平助も源さんも山南さんも。


土方さんだって、いない。


斎藤も左之助も島田だって、かつての友は生きているのかいないのか。

それさえわからない。


今の俺にはそれを知る術なんてなくて。


一人きりになっちまった気分なんだよ。

俺一人が取り残されてる。

俺一人だけが、生き残ってしまった。