指先で紡ぐ月影歌





視界に入る土方の姿は紛れもなくかつて見てきた【新選組・鬼の副長】のもので。


最近優しくなってきたという噂など嘘だと思うほど変わっていない。


その瞳も、奥にある激情と優しさも。

全て変わらずあの頃のままだった。




(副、長…)



その姿に鉄之助の目の奥がじわりじわりと熱くなっていく。

ゆっくりと再び歪んでいく視界。

瞳には今にも溢れてしまいそうなほど涙が溜まっていた。


変化していく鉄之助の表情を見ながら、土方は静かに刀をおろす。


そして




「…馬鹿が。俺にこんな猿芝居みたいな真似させんなよ」




とまるで我が子を見るように微笑んだ。