指先で紡ぐ月影歌





まるで京都に来たばかりの頃…あの芹沢さんの一件のように。


あの時俺は此処にいることを選んだけれど、平助は離れることを選んだ。

一体俺とあいつの何が違ったんだろうか。


ふと、あの時俺に頭を下げたあの人の姿を思い出した。


平助たちが出ていったあの日。

笑顔で伊東さんたちを送り出していた近藤さん。

その笑みに嘘はなかったのだろうと思う。


だけど、あの人の笑みは嘘だったはずだ。


まるで仮面のような、感情一つのっちゃいない笑み。


見抜けた奴がどれくらいいたかはわからない。

少なくとも俺には愛想笑いにすら見えなかった。怖いとさえ思った。


その背中には確かに鬼がいた気がする。