指先で紡ぐ月影歌





山口とその名を変えた斎藤の帰還に、阿呆みたいに口をあんぐり開けた俺と大口開けて笑った左之。


してやられたというか、やっぱりというか。

そんな複雑な心境。


でもあの人らしいやり方だと思った。

近藤さん一人ではそういう騙し討ちみたいなことは出来ないから。


それには斎藤のような人材がうってつけだったのだろう。

あいつも島田と同じようにあの人の意をよく理解してると思う。


本当にあの人は此処が好きすぎる。

いつかその命を投げ出すんじゃないかと思うくらい。


そして思い知らされた。


やはり伊東さんと俺たちの間には絶対に埋められない溝があったのだということを。