指先で紡ぐ月影歌





でも、不覚にも泣くかと思った。


だってこうなることをわかってて俺をその場に行かせたのは、寝返らない自信があったからだろう。

勿論そんな気があるわけないから当然といえば当然だ。


だけどそれをあの人も当然だと思ってくれていることが嬉しかった。


そしてそれは俺の立場を確かなものにしてくれた。


言い合いをしても、対立してもいいのだと。

近藤さんに向かって言いたいことを飲み込む必要はないのだと。

それが俺の立場なんだと。


あの人の中での俺の立ち位置を教えてくれた。


きっと俺の気が立っていたことも、腹に抱え込んでいたことも知っていたんだと思う。

俺がそういうまどろっこしいのが性に合わないのを知っている人だから。