指先で紡ぐ月影歌





それでも結局最後は"原田だからな"と呆れながらも笑っていたあの人。

たった一言だが、その言葉に俺も納得せざるをえなかった。


まぁ、左之だし。


予想は出来なかったけど、不思議なことに違和感もなかった。


それにほんの少し羨ましかったのも事実で。


こんないつ死んでもおかしくないような時代で、状況で結婚を決めちまえる左之の潔さが。

着いていくと決めたおマサちゃんの強さが。


ほんの少し、羨ましかったんだ。

この時ばかりは本気で左之を格好良いと思ったよ。


そんな幸せそうに笑う左之の姿を見て、心の奥で密かに亀屋の芸妓だったあいつを思ったことは誰にも言えない。