指先で紡ぐ月影歌





山南さんはわかっていたのだろうか。

その均衡を壊そうとしている奴らがいることを。

伊東甲子太郎という男が入ってきた頃から、少しずつ雰囲気に肌に刺さるものが混ざってきていたことに。


本人の口からその答えを聞くことは出来なかったけれど。

でもあの人と同じように山南さんもまた組を大切にしていた。


だからこそ、あの脱走は組の為だったんじゃないかと俺は思っている。



だって、まるで見せつけるみたいじゃねぇか。


組を抜けるということが、どういうことなのか。


脱走した山南さんは総司に探させて連れ戻したと聞いた。


どちらにとっても残酷な話だったと思う。

あの人とはまた違う形で仲が良かった二人だから。