指先で紡ぐ月影歌





だけど俺だってわかってる。

ここにいる以上、それを背負う義務があることを。


恐らくあれは、あの二人で向き合った時間は俺に与えられた最後の猶予だったのだと思う。

決定は覆らないけど、それでも俺に考える時間を与えてくれたのだろう。


でも、そんなもの必要なかったのかもしれない。


あの人が"すまない"と頭を下げるから。

珍しく俺の下の名前なんて呼ぶから。


その瞳に、覚悟が浮かんでいたから。


そんなの見せられたら、もう答えなんて決まってるじゃねぇか。

俺が逃げるわけにはいかない。


ふと頭の中に蘇ったのはさっき見た左之の表情で。


あぁ、あいつもこの瞳にやられたのか。