指先で紡ぐ月影歌





握った手に力が入らなかったわけがねぇ。


京に来て、やっと得ることの出来た機会なのだから。

周りの奴らも皆そうだった。


溜め込んでいた欲求が体の底から這い上がって。血が、騒ぎだす。


だが、そんな俺たちの前に思わぬ壁が立ちはだかった。


それは長州の浪士でも、倒せない妖でもない。

会津藩の兵士だ。


何でも俺らが来るなんて聞いてねぇだとか、なんだとか。


いやいやいや。

確かに手柄上げたい気持ちは十二分にあるけど。

ちゃんと呼ばれてきてんだよ、こっちは。


そう思うものの相手は会津。

そんな奴ら相手に無名の浪士の集まりが文句なんて言えるわけがねぇ。