アポロチョコ



その日は休み時間毎に、山上詣での女子がやって来た。


山上ってこんなにもてたっけ? とか。

あんな無愛想な奴の何処がいいのか? とか。


その度廊下へ消えていく山上の気配に心を乱されていた。


昼休み、あたしは早々に教室を抜け出して美術室にいた。


「山上くん、今日はモテモテだね。

やっぱ、あれ、都大会出場で一躍知名度アップしたからかな?」

霧子が無責任な発言をする。

「俺は霧子ひとりに好かれればそれで十分」

その横で山之辺が霧子からのバレンタインチョコを口に入れた。

「おおぉ~、うめぇな、この生チョコ」

「でしょ、愛が篭ってるからね」

「サンキュ、俺も愛してる」

と山之辺は霧子の頭をしっかっと抱き寄せて、その頭上にキスを落とした。


「もう……、目の前でいちゃつくなよっ!」


妬かない妬かない、と更に二人は笑ってキスをして見せた。