いつものように、暗い玄関で靴を脱いだ。
誰もいない家の中が、いつにも増して肌寒く感じる。
山上はここからあたしを救い出そうとしてくれたのだ。
それが同情でも友情でも、そんな細かいことどうでもいいじゃないか。
あたしの好きが、心からのもので、それが自然に溢れるものならば、隠す必要も閉じ込める必要もないじゃないか。
山上の彼女になりたいなんて思った訳じゃない。
奴の傍にいる理由が欲しかっただけなのだ。
なんだ、そんな簡単なこと。
でも……、
あたしはそこから逃げ出したのだ。
そのことが何より苦しかった。



