幸いなことに次の日の練習は雨で流れた。
「たまにはゆっくり身体を休ませろ」
という顧問の声に、あたしは早々に霧子と共に学校を後にした。
「あれ? 山之辺は?」
いつもはぴったりと霧子についてる山之辺の姿が見えない。
「う~ん、なんか委員会の用事じゃない? 先に帰ってろだって」
「珍しいな」
「たまにはいいんじゃない。
あいつがいると直ぐに肉食系の献立に走っちゃうし。
今日は思いっきり魚にしちゃおう!」
勇んで鮮魚コーナーへ回る霧子の後をついて歩く。
「霧子は凄いな」
「何が?」
「普通に恋愛しててさぁ」
「だね。わたしも自分でちょっと驚く。こんなあたしでも恋ができたんだなぁって」
「あたしは無理そうだよ」
「そんなことないって」
「自意識過剰なんだ」
「それが好きってことなんじゃない?」
「もっと普通に好きの気持ちでいれたらなぁ」
こんな場所で、こんな時に、人はなんで素直な気持ちになれるのだろう。



