アポロチョコ


明るい店内をぐるりと見渡して、先ずはお弁当コーナーに歩み寄った。

――やっぱ、ハンバーグ弁当かなぁ~、それにサラダ、プリン、ミルクティ。

次々に品を手にとって、ふとお菓子のコーナーで目を留めた。

――そうだ、霧子に友チョコ……

霧子の為に小さなアソートチョコの詰め合わせを一つ選ぶ。

そして、もう一つ、自分の為にアポロチョコを買った。


ただ甘ったるいチョコは苦手だ。

アポロチョコはイチゴの酸味とチョコの甘さの絶妙なバランスが気に入っているのだ。

この円錐形の姿も可愛らしい。


――バレンタインかぁ……

ったくこんな質面倒くさいイベントを流行らせた奴が恨めしい。


だいたい、何で女が男にチョコをやらなきゃなんないんだっ! とか。

どうして女が男に告白しなきゃなんないんだっ! とか。


恋に敏感なのは女の方だろ?

鈍感な男の気を引くために恥を忍んで勇気を振り絞って。

それで選択権は向こうにあるって、詐欺のようなイベントだ。

誰があんな無神経鈍感男にチョコなんてやるもんかっ!


あたしはコンビニ前のベンチで、怒りに任せてハンバーグ弁当をかっ食らった。