あたしは部室に立ち寄ると、制服を手提げに詰め、鞄を手に慌てて外へ出ようとした。


「ずいぶん急ぐのね」


なんて、ゆっくり帰り支度をしていた西原があたしの背中から声とかけてきた。

こっちは、早くここから逃げなくてはと気だけが焦っているというのに。


「用事があるんだ」


落ち着きを取り繕って返事を返した。


なんであたしがこんなコソコソしなくちゃならないんだ、とか。

こんなに焦る必要があるのか、とか。

色々言いたいことは山ほどあったけれど。


「狼に気をつけて」


なんて、意味不明の言葉を西原は最後に吐いた。

――なんだこいつ?

と首を傾げながらも、その言葉の意味するとろころがわからないでもない。


あたしはそのまま部室を後にした。