男陸はもう準備運動を始めていた。 「咲、遅いぞ」 いつもと変わらぬ山上の声が飛んできて、あたしは安堵する。 ――大丈夫だ、いける! 「すいませ~ん。西原の柔軟に見とれてて」 ハハハ……、と周りから小さな笑いが起こった。 「確かに、あいつの柔軟は見応えがあるが……、時間厳守だ」 「は~い」 ――テンション高く、笑顔で乗り切れ、咲、ファイトッ! あたしは自分にエールを送った。