長い授業がやっと終わり、玄関で靴を履き替えていると。
「実里」
急に後ろから名前を呼ばれた。
「っ戸田くん!」
「うん」
え?
話しかけといてそれだけ…ですか?
いや別にいいんですけどね。
「帰れ」
「…あ、はい。なにも言われなくても、ほらこの通り。ちゃんと帰りますよ」
私は自分の靴を指差した。
いやそれにしてもひどくないですか?
帰れ、って思いっきり命令形だし。
じゃあ、と頭を下げ、玄関を出ようと歩き出すと……
「待ちなよ」
「ぅあっ」
いきなり手首を掴まれた。
なになになになにっ? 何事?!
そしてそのままぐいっと引き寄せられ、私はすっぽりと戸田くんの腕の中に収まった。
「あああああの、ととと戸田くん?!」
「………」
いやっ、黙らないでーーーーーっっ!!
戸田くんは私の耳元で言った。
「なにひとりで帰ろうとしてんの」
「え…だって戸田くんが帰れ、って言ったじゃないですか…」
戸田くんは「あーー」と呆れた声を出した。
「あのね、ちゃんと意味理解しろ、ばぁか」
「ばっ…」
ひどっ!
すいませんね、戸田くん。
岡田さんは国語能力低いんですよーだ。



