戸田くんは私の部屋の場所まで知ってるんですか?!
私も戸田くんのあとを追った。
「戸田くん、どうしたんですか?」
私が聞くと、戸田くんは頭をがしがしかいた。
「…デッサン、教えろ」
おぉぉ、命令形ですか。
それにしても、照れながら言う戸田くんがなんだか可愛くて笑ってしまう。
戸田くんがむすっとし始めて、やばい、と焦る。
「美術のデッサンですか?」
「…そー」
…やっぱり可愛い。
戸田くんの照れ顔はレアものですね!
「じゃあ、今からなんか絵描いてください」
「は?」
「いーからいーから」
私は戸田くんに鉛筆と紙を渡した。
「なに描けっていうの」
「えー…と、じゃあ、犬! 犬描いてください!」
「はぁ? 犬?」
ぐちぐち言いながらも、戸田くんは紙に鉛筆を走らせる。
あぁもう!
絵を描いてる姿さえもかっこいいなんて、ずるい。
「……できた」
「えっ?」
案外早くてびっくりする。
戸田くんは、照れるわけでもなく、意外にあっさりと絵を見せてくれた。
「………え…」
「………」
……えーと、えーと。
「あの戸田くん。どうして足が車輪になってるんですか?」
「あ? 違ったっけ」
「全力で否定させて頂きます!」
戸田くんの意外すぎる一面に、私はただただびっくりするばかり。
「別に絵描けなくても将来困る事はない」
「……」
「見たものそのまま描くなんてつまんない。もっと自由に描かせろあほ」
「………は、はいすみません」
な、なんで私が怒られてるの…?
その後戸田くんの素晴らしいデッサンが提出された事は、言うまでもない。



