「麻耶…」
利希くんが、あたしを真剣に見つめている。
「利希…くん…?」
あたしの声に何も反応してくれない。
それどころか、少し目を細めている利希くん。
え、ちょっと待って…。
「利希くん…近いよっ…!」
そこでやっと利希くんの口が開いた。
「ドキドキ…する?」
「そのっ…なんか、心臓がバクバクしててっ…苦しいっ…」
自分の今の状態を利希くんに言うと、利希くんはクスッと笑ってあたしから離れた。
「そう」
満足そうにニヤリと笑うと、あたしに手を差し伸べた。
「ほら、立って」
「あ、ありがと…」
さっきの質問、なんだったんだろ…?
「さすが男慣れしてないよな…」
「え、なんか言った…?」
「ううん」
「あんな顔真っ赤にさせて、期待させること言うなよな…」
そんなことを利希くんが言っていたのを、あたしは知らない。
