後ろから声がしたため、振り向くと竜希くんが立っていた。


「トイレは逆方向だよ?」


「あ、そっか…。ありがと…」



あたしが竜希くんの目を合わせずに立ち去ろうとすると。


「待って」


ガシッと腕を掴まれた。


振り返ると、真剣な目でこっちを向いている竜希くんと目が合う。


そのまま、壁に押しつけられた。


「きゃっ!」


痛い…!


「最初から狙ってたんだよねー、麻耶ちゃんのこと」


「え…?」


「彩華から聞いたけど、麻耶ちゃんって男慣れしてないらしいじゃん?」


「っ…!」


あたしはギュッと目を瞑った。


「俺が教えてあげようか?」


竜希くんの顔があたしの顔に近づいてくる。


あたしは助けを求めた。


「利希くんっ!!」