「…うん…」


戸惑いながらも景時がコクリと頷いた途端、黒曜がうさぎの腕を掴んで立ち上がった。


「行くぞ、紅玉。」


有無を云わさぬ厳しい声。
有無を云わさぬ圧倒的な力。

引きずられるように窓辺に寄りながらも、うさぎは必死で首を振った。


「嫌じゃ、黒曜。
妾は…」


「コイツは赤光だ!!!」


激しい怒号に、華奢な肢体が震える。

細い腕にめり込む鋭い爪に、美しい顔が歪む。


「忘れたわけじゃないだろ?!
赤光と関わっ
!」


黒曜の視界の端に、飛来する木片が見えた。

朽ち果てた木材だろう、それなりの大きさだが、彼は造作もなく片手で叩き落とした。

同時に反対側から飛んできた蹴りも、避けることなくもう片方の腕で弾き返す。