「もう全部思い出したし、ちゃんとわかってる。
うさちゃんのおかげだよ?
ありがとね。」


「…そうか。」


照れたように頭を掻く景時を見て、うさぎも優しい微笑みを浮かべた。

幼い頃から景時を苦しめていた悪夢は消えた。

全ては己の存在故に起こったこと。
受け入れるには、相当の葛藤や苦しみがあっただろう。

それを、彼は乗り越えたのだ。

だが…


「なんかね、うさぎ、うさぎって呼び続けてたら、父さんと母さんが起きちゃったみたいでさー…」


またソレか…と、溜め息混じりに呟いた黒曜にも、急に眉を顰めたうさぎにも、景時は気づかない。


「助けに出てきてくれたの。
スゲぇンだよ。
一発で鏡が砕けちゃっ
ぐぅっ?!」


突然低い声で唸った景時が、身を捩った。

躰の中を、皮膚の内側を、ナニカが容赦なく這い回る感覚が彼を襲う。

コレ、知ってる。

前にやられてる。

俺がうさぎを捜しに、寺を抜け出した朔の夜に…