赤い月 終


景時は鏡に近づき、そこに映る深雪に離れているよう合図を送った。

お互いの声は届かないが、なんとか伝わったようだ。

深雪の泣き顔が視界から消えたのを確認して、景時はやけに重く感じるバジュラを構えた。


(…おっかしーな…)


コレ、こんな重かった?
てか、躰ってこんな重かった?
この部屋、こんな歪んでた?

目眩が頭痛に変わる。

視界が揺らぐ。

諸々の違和感を訝しく思いながらも、景時はバジュラに念を込めた。

斬鬼刀は…


(は?
なんで?)


出ない‥‥‥

目を閉じ、深く息を吐き、精神を統一…

できねーよ?

あら?
どーなってンの? コレ。

景時はウォールミラーの前に膝から崩れ落ち、片手で額を押さえた。