赤い月 終


深雪は目を見開き、ポカンと口を開けた。

美しい彫像のようだったバケモノが、笑ったのだ。

聖母のように、慈愛に満ちて…

完全に力が抜けた深雪の手を、再びうさぎが取った。

景時を助けようと鏡の破片をパズル代わりにして、傷だらけになってしまった深雪の手を。


「己が元へ戻らぬと知っていながら、愛する者の為にその身を投げ出す。

人とは、かくもいじらしきものであったな。」


血で汚れた両手が優しく包み込まれ、急速に痛みが引いていく。


「やはり、そなたは良い娘じゃ。」


会ったこともないバケモノの眼差しに自分への深い愛情を感じ、深雪は戸惑った。

誰?

こんな綺麗な…

会ったことも…ない‥‥‥?


「…
うさぎさん…?」


惚けたような深雪の呟きには答えず、うさぎは立ち上がった。


「案ずるな。
景時は連れ戻す。」