ゆっくりと、赤光の首筋にバジュラを宛がう。
斬鬼刀を生み出し、伸ばせば、軌道の先には己の心臓。
『妾を殺してくれる者には出逢えなかったが、もう一人の恩人と巡り逢い、再びこの世に生まれ出た。』
うさぎは以前、そう言った。
だが景時がうさぎを斬った夜、本当は気づいていたのだ。
『己を生かす者』と同時に、『己を殺すモノ』に出逢っていたことを。
それ即ち、『斬鬼刀』。
景時では、人では無理だった。
だが、鬼なら。
金剛杵の本来の持ち主である、神なら。
月夜が逝った夜、こうしておけば良かったのだろうか。
いや、それでは景時と出逢うことはなかった。
やはり、これで良かったのだ…
「景時…
永久に、共に…」
うさぎが静かに目を閉じる。
いざ逝かむ‥‥‥