赤い月 終


足元に伸びてきた鎖を辛うじて躱した黒曜は、すぐに体勢を整えた。


(妙なモン、覚えやがって…)


胸の内で毒づくが、黒曜に焦りはない。

要は、全部まとめて取っ捕まえてしまえばいい。

そして、あの得物を奪えばいいのだ。

黒曜は次に襲ってきた鎖を、避けることなく右手で掴んだ。
手首を捻って腕に巻きつけ、再び別の鎖に手を伸ばすが…


「?!」


緩やかに、緩やかに、鎖が腕を登り始めた。

振り払おうとして、気づく。

左腕まで…

静かに、這うように。
優しく、柔らかく。
絡みつき、絡めとり…

景時が、人が使うバジュラ。
うさぎが、神が使うバジュラ。

こんなにも違うものなのか。

そのチカラも、性質すら。

黒曜の浅黒い肌が、完全に白銀で覆われた。

全力で身を捩り、もがくが、その力をも吸収されて包み込まれてしまう。


「紅玉…」


床に横倒しになった黒曜は、火を吹くかのような目でうさぎを見上げた。